2011/10/28◆平成23年度第12回税制調査会

代表幹事の坂井昭彦です。

平成23年度第12回の税制調査会の資料が公開されましたので見に行ってみました。今回から各省のヒアリングが始まっており、下記の通り、分刻みのスケジュールで金融庁以下8つの省庁のヒアリングが実施されています。

  1. 金融庁からのヒアリング   5:00〜5:10
  2. 警察庁からのヒアリング   5:10〜5:15
  3. 農林水産省からのヒアリング 5:15〜5:35
  4. 厚生労働省からのヒアリング 5:35〜6:05
  5. 総務省からのヒアリング   6:05〜6:10
  6. 文部科学省からのヒアリング 6:10〜6:15
  7. 内閣府からのヒアリング   6:15〜6:35
  8. 内閣官房からのヒアリング  6:35〜6:40

[各省庁の主な要望]

以下、ざっと主な要望について見ていきます。コメントも付していますが、これは個人的な雑感であり、代表幹事としての、あるいは会としての公式見解ではありませんので念のため。(わはは)

金融庁

1. 東日本大震災からの復興支援
 1) 地方公共団体が委託者となる土地信託に係る登録免許税等の非課税措置
 2) 日本版レベニュー債の非課税債券化等
2. 金融資本市場の基盤整備に関して緊急に措置すべきもの
 1) 金融商品に係る損益通算範囲の拡大
 2) 少額株式投資非課税制度(日本版ISA)の利便性の向上・事務手続の簡素化
 3) 国際課税原則の見直し(「総合主義」から「帰属主義」への変更)

【コメント】

1.の「東日本大震災からの復興支援」というタイトルには非常に違和感を覚えます。1)は単なる信託銀行への利益誘導策ですし、2)も何で海外投資家をそこまで優遇する必要があるのか、それによって日本の雇用や税収が増えているのかどうかといった総合的な検証がなされているのかどうか、いや、検証できるのか?といったところが疑問なので単に銀行がそういった公社債発行などの手数料を稼ぎたいだけなんじゃないの?と言う気がします。

2.の「金融資本市場の基盤整備」関連も小泉改革以来の金融機関優遇策(「貯蓄から投資へ」要は「リスク負担を金融機関から投資家へ」とシフトさせるための政策)なので個人的にはなんだかなという感じですね。損益通算は全ての所得を適正な超過累進税率により総合課税するなら当然導入すべきですが、定率・低率の分離課税のまま導入するってのはそもそも問題があるのではないかという気がしますし、日本版ISAも同じく分離課税の率が超低税率から本則の低税率に戻るだけの話なのに、それを言い訳に導入したようなところがあるし、国際課税原則の見直しに至っては、PEに帰属するかどうかといった帰属主義を原則とするように変更すると独立代理人が取引を行ったように装う租税回避を助長し国益に反することになる可能性もありますし、例えば米国との間では日米租税条約により帰属主義によることとされているなど、必要に応じて(かどうかはわかりませんが)既に帰属主義に変更しているなんてこともあり、原則からごろっと帰属主義にしてしまうことが良い事とは思えません。(ちょっと話は違いますがAmazonへの日本の法人税課税ができないことも本来は議論すべき問題があるような気がします)

というわけで結構ボロカスに言いましたが、各省庁の要望や経済界からの要望は、その省庁や業界の利益代表みたいな立場からなされるものですので、まあこんなもんかという気もしないでもないです。(わはは)

例えば金融庁はその他の項目で生命保険金に対する相続税の非課税枠の拡大なども要望しています。

(警察庁

次の軽油引取税の課税免除の特例(平成23年度までの時限)の3年間の延長を要望

 1) 警察用船舶の動力源
 2) 警察通信施設の非常電源
 3) 自動車教習用車両の動力源

【コメント】

1)と2)はわかりますが、3)はちょっと疑問ですね。「教習用車両については、国民の免許取得を支援し地域の交通安全の確保を図る。」とありますが、交通安全をはかるのであれば国民の免許取得は支援しない方が良い(もちろん無免許を推奨しているわけではなく、適正な運転技術を有している公共交通機関の利用を推奨する等した方が安全になる)という考え方もありますので、これは天下り先のための便宜かなという気がしないでもないです。もっとも、軽油引取税は従来は道路特定財源だったということなので、もともとの趣旨からすれば教習所内を走る車に使う分には課税免除でも良いのかも知れません。(ただ、路上に出る場合は不可と考えれば、路上教習と教習所内とでケースを分けて考える必要もありそうです。ややこしいですね)

農林水産省
(継続要望事項)
 1) 農林漁業者等の軽油引取税の課税免除の特例の恒久化(軽油引取税
 2) 農林漁業用A重油に対する課税の減免の2年延長(石油石炭税)
 3) 平成24年度以降の農地に対する負担調整措置の存続(固定資産税)等
(新規・拡充要望事項)
 1) 林業経営の継続を確保するための納税猶予制度の創設(相続税贈与税、不動産取得税)
 2) 山林所得の特例措置の森林経営計画への適用(所得税
 3) 農地に係る贈与税の納税猶予を適用している場合の貸付けの特例等の創設(贈与税・不動
   産取得税)
 4) 農林漁業の6次産業化を促進するための特例措置の創設(所得税法人税
 5) 再生可能エネルギー対策、森林吸収源対策等を推進するための税制度の創設
  イ) 再生可能エネルギー対策、森林吸収源対策等を推進するための税財源の確保
  ロ) 石油石炭税の上乗せ税率についての農林漁業用軽油の免除・還付措置
  ハ) 再生可能エネルギー発電施設を新たに導入した場合の固定資産税の免除措置等

【コメント】

軽油引取税に関してはそもそも道路特定財源だったので農林漁業生産に使用される軽油は免税とされており、平成21年に一般財源化された後も、当初の趣旨から免税措置が継続されてきたようです。ただA重油に関しては単なる農家優遇策のようにも思えます。固定資産税の負担調整措置についてはそもそもこの負担調整措置自体に問題があるとの考え方もありますので、抜本的な議論が必要かと思います。納税猶予関連は農林業にかかわらず、相続税贈与税が財産課税の形をとる以上、換金できない、あるいは処分が拘束されている財産については一定の措置を講ずるべきかと思われますので、事業承継税制、小規模宅地等についての課税価格の計算の特例、物納制度、あるいは納税資金融資制度などとともに総合的に対策する問題かと思います。あと、産業構造を変えて行く政策やエコ関連の政策については税の世界ではなく補助金の世界で行うべきではないかと思います。

厚生労働省

1. 医療関係
 1) 社会保険診療報酬に係る事業税の非課税措置の存続等
 2) 医業継続に係る相続税贈与税の納税猶予等の特例措置の創設
 3) 社会医療法人に対する寄附に係る寄附金控除等の創設
 4) 研究開発税制(増加型・高水準型)の恒久化(※1)
2. 年金関係
 1) 公的年金等所得の所得区分上の見直し
3. たばこ税
 1) 国民の健康の観点からたばこの消費を抑制することを目的とした、たばこ税の税率の引上げ
4. 雇用関係
 1) 配偶者控除の見直し
5. その他
 1) 生活衛生同業組合等が設置する共同利用施設、公害防止用施設に係る特別償却制度の適用期
   限の延長・拡充
 2) 子どもに対する手当に関する3党合意に基づく税制上又は財政上の所要の措置の検討
 3) 子ども・子育て新システムの構築のための税制上の所要の措置(※2)など7項目
 4) 社会保険診療等に係る消費税のあり方の検討

(※1)経済産業省(とりまとめ)、総務省文部科学省厚生労働省農林水産省国土交通省
    、環境省との共同要望
(※2)内閣府(とりまとめ)、文部科学省との共同要望

【コメント】

医療関係については、事業税はそもそも地方公共団体からサービスを受けていることに対する応益負担だと言われているので、その趣旨からすると「社会保険診療だから」とか「医療だから」などといった政策的な目的で免除や減免をすべきではないと思うので却下、納税猶予に関しては持分ありからなしへの過渡期の措置としてはまあアリかなと、寄付金控除は個人的に嫌いなので却下(をい)、研究開発税制も本来ソレって税制ではなく補助金とかでやるべき事でしょってことで却下ですね。バッサリ行き過ぎ?失礼!

年金関係は年金所得の創設ですが、確かに担税力に配慮した控除なども特別に別途設けられていることなどを考えれば雑所得のひとつというよりは年金所得として分離した方が良いかも知れません。年金だけの申告者も増えることを考えれば納税者にもわかりやすいかなと。

たばこ税は「健康の観点から消費を抑制するために増税する」というキレイゴトが気持ち悪いですね。健康に悪いなら禁止するのが筋です。禁止しないで税金を課すというのは、いわば麻薬中毒患者に高値で麻薬を売りつける麻薬の売人と同じ発想だと思ってしまうのは私だけでしょうか?私はたばこは吸いませんが「健康の観点から太っている人には課税します」なんて言われたら怒ります。海外では脂肪税とかもあるようですが。*1

雇用関係は配偶者控除の見直しですが「見直し」とか言ってごまかすんじゃじゃなくて「縮小・廃止」ときちんと本音を書けよというのが第一点、あとは、とにかく専業主婦を働かせて社会保険料や厚生年金の増収をはかりたい、みたいなところが透けて見えてなんだかなといった感じです。

その他項目はまず、業界要望はさておき、子ども手当に関してはなんだかあいまいな要望しかしていません。子ども手当を複雑化するとかえってコストが増えるので、やめるならすぱっとやめて元通り(年少)扶養控除を復活、みたいな対応をした方が良かったような気がしますね。チマチマ変えると自治体のシステム改修費がまたITゼネコンなどに流れ込むだけで、結局は税金の無駄遣いを助長することになります。

ちなみに所得制限なしの子ども手当は不公平だとかいった議論がよくなされていますが、私は、応能負担原則を徹底して全ての国民から適正に税を徴収し、その上で、全ての国民に等しく同じ金額の子ども手当を支給すれば、結果的に金持ちにはそこそこの、貧乏人には手厚い支給となるので、チマチマ細かく所得制限などしなくてもよく、非常に合理的な制度になり得ると考えています。

なので、子ども手当などに於ける所得制限云々はクロヨン議論などと同様に、貧乏人同士、コップの中、あるいはお釈迦様の掌の上で「争わされている」だけの話であって、本当の意味での課税の公平の実現にはほど遠い議論だと私は思っています。

その他項目はあと、社会保険と税の一体化に関する要望があがっていますが抽象的で何が言いたいのかよくわかりません。最後に消費税についても要望していますが、社会保険診療だから消費税を課さないというのも本来はおかしな話なので私個人的には却下。消費税は非課税などの例外を認めると本来成り立たない税なので、非課税などは極力なくすべきだし、だからこそ、低税率でなければならない、というのが私の持論です。

総務省

1. 情報通信関係
 1) 通信・放送システム災害対策促進税制の創設〔国税地方税、新設〕
 2) 軽油引取税の課税免除の特例措置の延長(電気通信設備の電源の用途)〔地方税、延長〕
2. 郵政事業関係
 1) 関連銀行及び関連保険会社が、統合後の日本郵政株式会社に業務委託する際に支払う手数
   料に係る消費税の非課税措置の創設〔国税地方税、新設〕
 2) 社会・地域貢献準備金を経過措置を講じた上で廃止〔国税地方税、廃止に伴う経過措置〕
3. 地方自治関係
 1) 社会保障・税番号制度の導入に伴い設立が予定される地方共同法人に係る非課税措置の創設
   〔国税地方税、新設〕
 2) 軽油引取税の課税免除の特例措置の延長〔地方税、延長〕

【コメント】

情報通信関係は災害に備えて非常用電源設備や予備設備を設置した場合の特別償却と固定資産税の軽減を要求していますが、こういうのも本来、税制で対応するべきことなのか疑問です。軽油引取税の免除は元々は道路特定財源だったと言うことでそれ以外の用途は課税免除されてきたため、その延長ということで、警察庁農林水産省と同じく、その趣旨はわからんでもないのですが、見方を変えて、これまで道路特定財源だった軽油引取税は廃止され、一般財源に充てるための新たな税として軽油引取税が設定されたと考えれば、税の名前は同じでも中身は違うので、免除するのはおかしいんじゃないの?という気もします。あと、東日本大震災があったためか「災害対策」と言えば何でも通るような雰囲気があるような気がしますが、これは「エコ」などと同じく一種のマジックワードとして使われている懸念がありますので、よりきちんと中身を精査する必要があろうかと思います。災害対策と言えば何でも通ると思うなよ!ってことです。

郵政事業関連は条約で義務づけられている郵便事業だけではなく金融サービス・保険サービスについてもユニバーサルサービス(全国どこでも誰でも同じ内容のサービスが比較的安い料金で受けられること)を義務づけられているため、日本郵政株式会社が窓口になって金融サービス(株式会社ゆうちょ銀行に業務委託)、保険サービス(株式会社かんぽ生命保険に業務委託)を提供しなければならないが、民間の金融機関なら同じ金融機関の中で全ての業務を扱えるので業務委託の必要がないのに、日本郵政株式会社の場合は株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険という関連二社に業務委託せざるを得ない。業務委託をした場合はそこに消費税がかかってくるが、これでは民間の金融機関との競争において著しく不利なので、この場合の消費税を免除してくれ、という要望です。まあこれはわからんでもない話ですね。

郵政民営化に関しては米国の年次改革要望書の圧力に屈した形で民営化に突き進んだようなところもあり、動機や効果に疑問点が多いと思っていましたが、話し出すと長くなるので省略します。(わはは)

郵政事業関連のもうひとつは廃止されることになった「社会・地域貢献基金」の取り崩しを一気に行うのではなく10年間均等で行う事(要は課税の繰延)を要望しています。社会・地域貢献基金は、郵政民営化に伴い、不採算の過疎地の郵便局などが切り捨てられたりしないようにするため、ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の株式の売却益や配当収入などの一部を原資として1兆円(最大2兆円)を積立てることを義務づけ、その運用益を対策資金に充てることとされていたものですが、過疎地対策の十分な原資にはなり得ないという批判などが出て、結局は、郵便貯金や簡易保険の限度額引き上げを行うことで増収をはかり、その増収益で過疎地の郵便局等の救済をはかることとし、基金自体は廃止されることになったものです。こちらもまあ、妥当な要求かと思います。

地方自治関係は番号制度導入に伴い設立される地方共同法人について、法人の設立時の登録免許税等・設立後の法人税所得税、登録免許税、印紙税地価税、消費税等について非課税措置を要望しています。この場合の地方共同法人とは、番号制度の導入に伴い、番号生成機関、指定情報処理機関、指定認証機関の事務等を担うこととされている法人ですが、天下り先のニオイがプンプンしているので何だか嫌な感じです。

ちなみに、地方共同法人とは何かというと、平成13年12月18日に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画の中の「III 各特殊法人等の改革のために講ずべき措置その他の必要な事項」の中の民営化という項目の中に出てきます。以下、参考までに全文引用します。

(5) 地方共同法人(仮称)
イ 地方公共団体の共通の利益となる事業等、その性格上地方公共団体が主体的に担うべき事業であって、国の政策実施機関に実施させるまでの必要性が認められないものの実施主体の選択肢の一つとして、当該特殊法人等を地方公共団体が主体となって運営する「地方共同法人」(仮称)とすることが考えられる。
ロ 法人格は、民商法又は特別の法律に基づく法人とする。
ハ 国又はこれに準ずるものの出資は、制度上及び実態上受けない。資本金が必要な場合には、関係地方公共団体が共同出資する。
ニ 法人の役員は、自主的に選任されるものとする。
ホ 法人内部に、必要に応じ、関係地方公共団体の代表者が参画する合議制の意思決定機関ないし審議機関を設ける。
ヘ 上記イのような事業について、地方公共団体の意向等を踏まえ、実施主体として他の組織形態を採用することも選択肢となりうる。

※ 出典 http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/tokusyu/gourika/III.html

軽油引取税は既に何度も出てきているので省略します。

文部科学省

1. 寄附文化の更なる推進
 1) (独)日本学生支援機構及び国立大学法人等が行う奨学事業、
   (独)日本スポーツ振興センター所有の国立霞ヶ丘競技場整備事業
    への個人寄附に係る税額控除の導入
 2) 寄附金控除の年末調整対象化
 3) 学校法人への個人寄附に係る税額控除要件の見直し
2. 年齢に関係なく、誰もが安心して学習できる環境整備
 1) 子ども・子育て新システムの構築のための税制上の所要の措置
  (内閣府厚生労働省との共同要望)
 2) アクティブシニア学び支援税制の導入
 3) 図書館・博物館・幼稚園を設置する一般社団・財団法人に係る非課税措置の創設
 4) 一般社団・財団法人に移行した都道府県私立学校退職金団体の退職金事業に係る利子等の非課税措置
3. 日本のたから・地域のたからの次世代への確かな継承
 1) 重要有形民俗文化財を国又は地方公共団体に対して譲渡した場合に係る
   所得税の非課税措置
 2) 史跡等の土地を国又は地方公共団体に対して譲渡した場合に係る
   所得税の特別控除額及び法人税の損金算入限度額の拡充
4. 科学技術イノベーションの推進
 1) 試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除
  (経済産業省等との共同要望)

【コメント】

まず寄附文化ですが、個人的にはこれに税制をくっつけるのはあまり好ましく思っていません。これは、税制上の優遇などなくても寄附する(見返りを求めない)のが本当の意味での寄附なのではないか?という個人的な思いがあるからですが、そんなわけで、税制をインセンティブにして寄附文化を定着させるといった話はノーサンキューです。

学習環境整備というか次世代を担うべき人材育成制度の拡充は個人的には国策としても最重要課題であると考えていますが、税制改正でできることは限られているせいか、なんだか要望が小粒ですね。(^^;

文化財や史跡の保護なども重要なのでこれも個人的には優遇があっても良いと思っていますが、いちいち東日本大震災を引き合いに出してこなくてもいいのにな、というのが正直な感想です。

科学技術イノベーションの推進も国策として重要なことだと思いますが、営利企業はあくまでも己の(日本の株主だけではなく外国の株主の)営利のために研究開発をするので、営利企業の研究開発を優遇するよりも、もっと大学などの研究機関における基礎研究などにカネを投入すべきではないかという気もします。(ま、それ以前に学生・生徒の教育ですが)

内閣府

1. 地域活性化の推進
 1) 構造改革特別区域法及び総合特別区域法に基づく特産酒類の製造事業に係る原料の拡充
2. 民間資金等活用事業(PFI)の推進
 1) 公共施設等運営権の登録等に係る登録免許税の軽減措置の創設
3. 特定非営利活動等の促進
 1) 認定特定非営利活動法人等、公益社団・財団法人への寄附金控除の年末調整対象化
4. その他要望事項
 1) 特定地域再生計画(仮称)の認定を受けた地方公共団体が指定する法人に対する寄附に係る
   課税の特例
 2) 公益社団・財団法人への寄附金に係る税額控除制度
 3) 子ども・子育て新システムの構築のための税制上の所要の措置
 4) 国の研究開発を担う新たな機関に関する制度に係わる税制上の所要の措置等

【コメント】

地域活性化の推進ですが、いわゆる「特区」における特産酒類の製造事業で使用することができる原料について、現行の農産物に加え水産物等を使用可能とすることと、災害時には特区以外の特産物を代替使用することができることを要望しています。水産物等を要求しているのは新潟県佐渡市のようですが、この水産物というのが何を指しているのかがよくわかりません。もしかして越前クラゲ?とか思わないでもないですが、このあたりは特に問題はなさそうなので要望としては良いのではないかと思います。代替使用はやむを得ない場合の措置だと思いますが常態化すると特区の意味がなくなるのでその点は留意が必要かと思います。

PFIの活用については、PFI自体が、単に税金で金融機関に長期にわたり金利を稼がせてやるためのシステムではないかといった批判もあり、あまり良い印象はありません。なのでその推進と言われてもちょっと、というのが個人的な感想です。

【参考】NETIBNEWS
●民間資金活用を謳ったPFI病院が頓挫失敗して分かった二つの問題点(上)
●民間資金活用を謳ったPFI病院が頓挫失敗して分かった二つの問題点(下)

特定非営利活動等の促進についても、本来、公がやるべきものは民ではなく官が責任を持ってやるべきであって、安易に何の責任もない民にその役割をふるといった「新しい公共」の発想は個人的には間違っていると思いますし、今の野放し状態をも含め、何らかの対策が必要なのではないかと思いますので、これには反対ですね。寄付金制度の拡充なども言ってみれば本来は税として強制的に徴収して実施すべき施策を、寄附などといった任意の拠出でなんとかすればいい、みたいな無責任な施策に転換するものだと言えなくもないので、個人的には批判的にとらえています。何でも自己責任だとか、何でも民にやらせればいい、などといった方向性に向かうと、極端な話、国など不要だということになります。これは、国の庇護を必要としない強者にとっては有利で、国の庇護を必要とする弱者には不利な世界になりつつあるということにほかなりません。それでいいのかニッポン!といった感じですね。

その他項目については、寄附関連は却下。子ども・子育て新システムはいわゆる「幼保一体化」などの話ですが、営利企業にも担わせることが書かれていたりして、結局は子どものための改革ではなく、補助金カットのためにする改革であるといった印象もあり、かつ、現場の意見を無視して進めているように見受けられるところもあって、あまり賛成したくないなというのが正直なところです。国の研究開発を担う新たな機関については、内容がまだよくわかりませんのでコメントのしようがないですが、基礎研究など日本の国力UPに資するものであれば賛成です。会議資料を見る限りではなんとなくよさげではありますが。(^^;

内閣官房

1. 原子力被災地の産業振興、生活基盤整備、住宅取得促進等のため、企業、個人に対して税制上の措置を講ずる。

【コメント】

内閣官房からは原子力被災地に関する税制上の措置が包括的に要望されています。心情的には非常によくわかるのですが、このあたりは税制による措置がなじむのかどうか疑問(ただし復興財源に関する税制は別)です。何よりも福島原発の早期冷温停止廃炉、及び、除染対策等が急務であり、税制上で手当てできること、すべきことは少ないような気がします。よく、被災地域では消費税や法人税を免税にすればいいといった話も聞きますが、利用できない土地の固定資産税等であればまだしも、事業活動をしている以上、消費税や法人税を免除するのは間違っているような気がしますし、情緒的な支持を集める安易な政治の道具として使われる危険性もあるので私個人的には反対です。

坂井昭彦@浅学非才な人間のコメントですので間違った認識もあろうかと思いますが、そのあたりは平にご容赦を。

p.s 今日は神戸支部の役員会でした。あまり体調もよくなかったので終了後そのまま帰途につき、朝霧の大蔵海岸で夕陽を見てたそがれておりました。(^^;

【大蔵海岸から見た夕陽】

*1:デンマークが2.3%以上の飽和脂肪酸を含む乳製品などに課税する脂肪税を2011年10月に導入、ハンガリーでは2011年9月にポテトチップス税、アメリカではコロラド州ソーダ税があるようです