2012/02/09◆国民の声[霞ヶ関ウォッチング]

代表幹事の坂井昭彦です。

内閣官房に設置された「国民の声」のホームページに、2/9日付で「国の規制・制度に関する意見の集中受付(平成23年9月1日〜10月14日)」で受け付けた提案等に対する各省庁からの回答が掲載されています。

●回答の見方
http://www.cao.go.jp/sasshin/kokumin_koe/recept/2011/20120209/item1.pdf
●資料1 (要望主体別「要望事項(事項名)」「制度の所管官庁」一覧表)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kokumin_koe/recept/2011/20120209/item0.xls
●資料2 検討要請に対する各省庁からの回答

内閣官房 回答(Excel : 56KB)
人事院 回答(Excel : 26KB)
内閣府 回答(Excel : 50KB)
公正取引委員会 回答(Excel : 58KB)
警察庁 回答(Excel : 124KB)
金融庁 回答(Excel : 365KB)
消費者庁 回答(Excel : 53KB)
総務省 回答(Excel : 232KB)
法務省 回答(Excel : 147KB)
外務省 回答(Excel : 38KB)
財務省 回答(Excel : 86KB)
文部科学省 回答(Excel : 94KB)
厚生労働省 回答(Excel : 457KB)
農林水産省 回答(Excel : 171KB)
経済産業省 回答(Excel : 266KB)
国土交通省 回答(Excel : 366KB)
環境省 回答(Excel : 231KB)

[雑感]

私もまだすべてを詳細に見たわけではないのですが、例えばもうすぐ閣議決定されそうな番号制度に関しては、内閣官房総務省の回答の中に、関連する内容のものがあったりします。

見ていただければわかりますが、経団連と生命保険協会が保険などの手続に絡めて番号制度の整備を後押しするような提案をしているほか、NTTデータも番号制度の整備を後押しする提案をしています。

注目すべきは経団連の提案で、言っている内容は生命保険協会とほぼ同様の内容です。国民利便だ何だと言っていますが結局は保険業界やITインフラ業界など、番号制度の導入によって直接的、あるいは間接的に利益を得る一部業界の要望が強い、ということが、こういった提案の類からも読み取れます。

あと、総務省などの回答の中には、主に行政書士資格に関する話ですが、資格関連の回答もあって面白いです。参考までにいくつか簡記しておきます。

(提案)行政書士に対する行政不服審査法等における代理権の付与

総務省の回答)
    「行政救済制度検討チーム取りまとめ(平成23年12月)」を踏
    まえ、弁護士法の趣旨及び既に「別段の定め」がある資格者の
    代理権の範囲にも配慮しつつ、検討してまいります。
法務省の回答)
    弁護士法第72条が無資格者による他人の法律事務への介入を
    禁じている趣旨は,そのような行為が当事者その他関係人らの
    利益を損ない,法律秩序を害するおそれがあるからである。こ
    の趣旨からすれば,厳格な資格要件が設けられ,かつ,その職
    務の誠実適正な遂行のための必要な規律に服すべきものとされ
    るなど,法律専門家としての能力的・倫理的担保を図るための
    諸般の措置が講じられた弁護士が法律事務を行うことには,十
    分な合理性,必要性があると考えられる。
    行政不服審査手続等の代理業務については,その不服の対象が
    多種多様であることのみならず,当事者の利害に重大な影響を
    及ぼすものであることから,幅広い法律分野に関する法律専門
    知識・能力及び高度の倫理が必要とされる。
    したがって,弁護士と同程度の法律知識・能力及び倫理が担保
    されることなく,弁護士以外の者について行政不服審査手続等
    の代理を業として行うことを認めることは相当でない。

(提案)士業制度(司法書士行政書士社会保険労務士等)の統一
(回答)行政書士の業務は、官公署に提出する書類や権利義務又は事実
    証明に関する書類の作成など、国民の権利義務に深く関わるも
    のであり、また、その対象分野も広範多岐に渡り、幅広い知識
    が必要とされることから、特定の分野についての専門性を必要
    とされる司法書士社会保険労務士等の資格と統一することは
    不適当と考えます。

(提案)行政書士法による権利義務又は事実証明に関する書類作成の独
    占業務の見直し

(回答)行政書士の業務は国民の権利義務に深く関わることから、行政
    書士法は、一定の能力が実証され、かつ守秘義務が課される資
    格者に限りこれを行うことを認めています。この趣旨を踏まえ
    ますと、権利義務又は事実証明に関する書類の作成業務を業と
    することを一般に認めることは、国民の利益保護の観点から不
    適当と考えます。

いずれも行政書士の業務を拡大するこちについては推進、縮小することには反対といった方向性が見てとれます。

あと、天下りや国家資格の免除制度についても提案と回答がありました。

(提案)国家資格の公務員試験免除制度の廃止について
(回答)一定の行政実務経験者に対しては、その業務の過程で行政実務
    に関する専門性を蓄積しており、行政書士が行う業務について
    一定の知識及び能力を有していることから、行政書士試験に合
    格しなくとも行政書士となることを認めているところです。

(提案)国家公務員の退職管理に関する基準の改定
(回答)御指摘のとおり、公務の公正性・効率性を害する「官・民の癒
    着」を根絶することは重要であることから、府省庁による再就
    職あっせん、在職中の職員による利害関係企業等への求職活動
    、国家公務員OBが離職後2年間、離職前5年間に在職していた
    局等の現職職員に対する働きかけを行うこと等を禁止といった
    現行の規制を厳正に行うとともに、独立行政法人の役員公募を
    実施するなど法人のガバナンス改革を含めた総合的な対応によ
    って国家公務員の再就職の適正化を図っているところです。

試験免除制度に関しては行政書士だけではなく、司法書士、税理士、弁護士も含めた提案でしたが、なぜか総務省からの回答のみで、結果、行政書士
みへの言及でした。

あとは、TPP関連と言うことでは

(提案)EPAに基づく外国人看護師・介護福祉士が活躍するための環境整備
(回答)【看護師国家試験について】
     我が国で看護師として働くには、患者にとっての安心・安全を確保
     するため、患者や他の医療従事者との日本語によるコミュニケー
     ションが必須であり、このため、国家試験では、医学・看護専門用
     語を理解している能力を評価できることが重要です。
     第100回看護師国家試験では、文章を分かりやすいものとする、難
     解な用語を可能な限り一般的な用語に置きかえる等の対応を行う
     一方で、専門用語については病名以外は原則として日本語表記
     に対する理解を問うこととしたところです。
     今後も、患者にとっての安全性を重視しつつ、個々の問題文や用
     語に即して個別に対応を行うこととしています。
     また、EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師候補者は入国
     年度より看護師国家試験を受験することが可能であり、早期から
     受験機会が確保されていることから、国家試験の回数を見直す必
     要はないと考えています。
    【介護福祉士国家試験について】
     介護福祉士試験における難解な用語の見直しについては、第23
     回介護福祉士国家試験(平成23年1月30日実施)以降、介護福祉
     士国家試験委員会による検討の結果に基づき、日本語能力の不
     足により利用者の安全確保や関係職種との連携に支障が生じな
     いか等を考慮した上で、難解な漢字へのふりがな付記や疾病名へ
     の英語併記等の対応を図ったところです。具体的な取扱いについ
     ては、試験問題を作成していく中で、個々の問題文や用語に即し
     て、個別に判断しています。
     また、介護福祉士国家試験の受験機会を増やすことについては、
     平成23年3月11日の閣議決定(「経済連携協定(EPA)に基づ
     くインドネシア人及びフィリピン人看護師・介護福祉士候補者の
     滞在期間の延長について」)に基づき、今年度、国家試験を初め
     て受験することとなるインドネシア介護福祉士候補者について
     滞在期間を延長することとしており、その結果も見極めながら検
     討してまいります。

ということで、外国の人材受け入れに関する対応なども進んでいるようです。

我々税理士に関連する業界のことや顧問先の業界のことはある程度調べて知っていますが、全然関係なさそうな業界の動向などもこういった「国民の声」やパブコメなどの意見を見ていくと色々伺い知れるところがあり、結構面白いです。